石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル対応のアスベスト事前調査

 アスベストが最も飛散する可能性がるタイミングが、解体工事や内装工事になります。石綿障害予防規則や大気汚染防止法では工事のタイミングで、石綿の有無を把握できるようアスベストの事前調査を義務付けています。


解体・改修前のアスベスト事前調査-目次-


1.解体・改修前アスベスト事前調査の重要性

 アスベストは建物に使用されているいちばん身近な有害物質です。過去に学校アスベスト問題やクボタショックなどアスベストが社会問題化するなかで、法律による規制や啓発活動など様々な対策がされてきました。特に建築物の解体作業やリフォーム、増築工事や修繕工事など工事における飛散事例が多いことから事前調査の重要性が高まっています。

(1)石綿障害予防規則や大気汚染防止法においてアスベスト事前調査が義務化

 石綿障害予防規則は労働者を保護するために、大気汚染防止法は周辺へのアスベスト飛散を防ぐために共通して、解体など工事前のアスベスト事前調査を義務化しています。健康被害を防ぐためにどこに飛散性のアスベストが施工されているか、非飛散性のアスベストを適切に処理するために事前調査によってばく露防止対策や工事計画を決定する必要があります。これらの調査結果はアスベスト関係書類として40年間の保存義務があります。

(2)建築基準法におけるアスベスト規制

 建築基準法では吹付けアスベスト使用を禁止しているため、建築物の増改築、大規模修繕・模様替えの際に除去を義務付けています。ただし、床面積の1/2を超えない増改築及び大規模修繕・模様替えの場合に限り封じ込めと囲い込みの措置を許容しています。基本的に解体作業でない工事であってもアスベストの措置が必要となり、アスベストの事前調査で石綿の有無をあきらかにする必要があります。

(3)計画段階での解体及び工事費用の把握と発注者責任

 アスベストの除去や封じ込め、囲い込みは届出、飛散防止、廃棄物の処理と費用がかかります。予期せぬアスベストを発見したため、工事の延期や除去費用の増加など報道もされています。特に外壁や内装に使用されている仕上塗材は、アスベスト対策が必要だと認識してないことが多く、工事直前に変更契約となる事例も出てきています。

 自治体など公共機関や民間企業であっても費用が大きくかかる経費については、決済が必要となるため発注者側もアスベストについて確認しておく必要があります。

アスベストに関わる責任は施工会社だけでなく、発注者の責任が大気汚染防止法でも明確に記載されてます。

(4)アスベスト施工の可能性がある建築物の解体件数増加

 アスベスト(石綿)の飛散による健康被害については、解体件数が増加していくと予測されていることから社会的に強い関心が寄せられています。これを受けて近年では石綿障害予防規則の改正もされました。

アスベスト施工の可能性がある民間建築物の年度別解体件数

出典:国土交通省 平成29年5月17日 アスベスト対策部会資料より抜粋

 建築物等の解体・改修工事にあたっては、大気汚染防止法の規定により事前に吹付け石綿、石綿含有の断熱材、保温材、耐火被覆材の有無を調査することが義務付けられています。また、石綿障害予防規則の第3条の規定より、建築物の解体等を行う際には、石綿の使用の有無の事前調査が義務付けられています。

 

 アスベスト含有の外壁仕上塗材(吹付け工法)が解体・改修工事等の工事時に届出の対象となることが明記され、アスベストの飛散防止対策が強化されています。

 

 一方で、アスベストの事前調査の未実施や不徹底により不適切な工事が行われた事例が報告されています。

 

 アスベストの事前調査の不徹底により、アスベスト建材が把握されずに建築物等の解体等の工事が行われとアスベストが飛散し、工事関係者や周辺住民への健康被害が懸念されています。


2.建築物の解体工事やアスベスト除去の規制について

建築物の解体・改修工事やアスベスト除去においては、労働安全衛生法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、建築基準法といった規制がかります。日本においては、建築物の解体工事時には目的によって係る規制が異なります。

法規 

管轄 対象

吹付け石綿

(レベル1)

保温材等

(レベル2)

その他成形板(レベル3)

規制内容 目的

労働安全衛生法

石綿障害予防規則

厚生労働省 解体と除去 建築物等に吹き付けられた石綿等 保温材、耐火被覆時、断熱材 石綿建材等

使用等の禁止

石綿含有建材の除去時の対策の規制

労働者保護、事業者への規制
大気汚染防止法 環境省 解体と除去 特定建築材料※ ※特定建築材料

規制対象外

特定建築材料の除去の対策などの規制

周辺住民保護

除去工事の発注者、事業者への規制

建築基準法 国土交通省

把握,管理、解体と除去

吹付け石綿と石綿含有吹付けロックウール 規制対象以外 規制対象外

増改築時の除去等の義務

報告、石綿飛散のおそれがある場合の勧告・命令

定期報告

建物利用者保護

建物利用者、管理者または占有者への規制

※特定建築材料とは、吹付け材、断熱材、保温材、耐火被覆材のうち、石綿を意図的に含有させたもの又は石綿が質量の0.1%を超えて含まれているものです。


3.法改正によってアスベスト飛散防止対策が年々強化

  平成26年6月1日 環境省より、建築物等の解体等に伴うアスベスト飛散防止対策が強化された。また、平成26年6月1日 厚生労働省より石綿障害予防規則が改正され、吹付けらえた石綿の除去などの措置、石綿含有の保温材、断熱材、耐火被覆材の取扱が強化されました。

(1)解体等工事の発注者・自主施工者が届出義務者に!

 吹き付け石綿等が使用されている建築物等の解体・改修等作業の届出義務者が、「工事の施工者」から「工事の発注者又は自主施工者」に変更されました。

 発注者が14日前までに届出をする必要があります

 

これまで工事施工者任せにして、発注者が知らなかったと言い逃れができないように改正されています。

アスベスト除去費用についても発注者が費用を負担しないケースがあり、飛散事故につながる事例があることから事前調査を発注者側でできるだけ把握して予算を確保しておく必要があります。

 

※吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材、耐火被覆材が使用されている建築物等の解体等工事作業が対象

(2)解体等工事の事前調査、説明、掲示の義務付け!

 建築物の解体等工事の受注者及び自主施工者は、アスベストの使用の有無について事前に調査し、その結果を解体等工事の場所に掲示しなければなりません。

 解体工事の受注者は、発注者に対して事前調査の結果を書面で説明しなければなりません。

 

 ※特定粉じん排出作業の届出が必要な場合には、届出事項の説明も必要になります。

(2)-1事前調査

 

 アスベストの関連法律より、解体等工事を行う場合、受注者又は自主施工者は、事前にアスベストの有無を調査することが義務付けられています。

(2)-2事前調査の説明

 

 受注者及び自主施工者は、アスベストの事前調査の結果及び届出事項(特定粉じん排出等作業届出など)を、工事の開始前までに発注者に書面で説明する必要があります。

※届出事項は、該当する場合になります。

【説明事項】

  1. 調査年月日
  2. 調査方法
  3. 調査結果
  4. 特定粉じん排出等作業の種類
  5. ※特定粉じん排出等作業の実施期間
  6. ※特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の部分における特定建築材料の種類並びにその使用箇所及び使用面積
  7. ※特定粉じん排出等作業の方法 
  8. ※特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の概要、配置図及び付近の状況
  9. ※特定粉じん排出等作業の工程を明示した特定工事の工程の概要
  10. ※特定工事の施工者の現場責任者の氏名及び連絡場所
  11. ※下請負人が特定粉じん排出等作業を実施する場合の当該下請負人の現場責任者の氏名及び連絡場所

 ※5~11については、特定粉じん排出等作業の届出が必要な場合

【掲示内容】

  1. 調査の結果
  2. 調査者の氏名又は名称及び住所等
  3. 調査終了年月日
  4. 調査の方法
  5. 特定建築材料の種類
  6. 届出年月日及び届出先、届出者の氏名又は名称及び住所等
  7. 特定工事の施工者の氏名又は名称及び住所等
  8. 特定粉じん排出等作業の実施期間
  9. 特定粉じん排出等作業の方法
  10. 特定工事の施工者の現場責任者の氏名及び連絡場所

 ※5~10については、特定粉じん排出等作業の届出が必要な場合

(2)-3調査結果の掲示

 

 解体工事の受注者又は自主施工者は、アスベストの事前調査結果を工事場所の公衆に見やすい所に掲示しなければなりません。

(3)立入検査等の対象の拡大!

 都道府県知事等による報告徴収の対象を、「届出が必要な解体等工事の特定工事の施工者」から「届出がない場合を含めた解体等工事の発注者、受注者又は自主施工者」にまで拡大されました。また、立入検査の対象も同様に「届出の必要ない場合の解体等工事に係る建築物等」まで拡大されています。


4.アスベスト事前調査フロー

アスベストの事前調査の一連の流れは下記のフローようになります。

  • 解体調査では状況により破壊調査、レベル3までの建材の種類と施工範囲の把握など調査の手間、確認すべきポイントが非常に多くなります。
  • 当社では石綿障害予防規則に対応できるよう、アスベストの施工範囲図まで作成しています
山梨 アスベスト(石綿)事前調査フロー
アスベスト事前調査フロー

(1)解体・改修時の事前調査と使用実態調査時のアスベスト調査範囲の違い

 ①解体・改修時のアスベスト事前調査

  • レベル1・レベル2・レベル3建材までを対象とした調査
  • 隠蔽部や層間塞ぎなど通常見えない範囲までできる限り確認する。

 ②石綿使用実態調査時のアスベスト調査

  • レベル1とレベル2建材を対象にした調査と劣化度の確認。
  • 建築物の使用に影響が出ない範囲での隠蔽部の確認調査

5.事前調査のご依頼時に必要なもの

 解体前・改修前のアスベスト事前調査はレベル1~レベル3まで全ての種類の建材を確認する必要があります。また、調査時の建物使用状況にもよりますが、隠蔽部を確認する破壊調査等を実施する必要があります。通常の確認調査より詳細な調査になりますので、以下の書類があると正確な調査を実施することができます。

  1. 設計図書
  2. 仕上一覧表(内部・外部)
  3. 矩計図
  4. 平面図(報告書に使用します。ない場合は部屋の配置図や消防法で作成した平面図で代用可能)
  5. 改修履歴

上記の書類が無くても調査自体は可能ですが、使用している建材名や仕上げが不明の場合は分析かみなしによって石綿の有無を判断します。建材の廃棄費用の増大や分析費、除去工数にも影響がでますので、できるだけ書類の提出をお願いいたします。


6.解体・改修前アスベスト事前調査の注意事項

 解体等の工事時に行う事前調査については、「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿にばく露するおそれがある建築物等のおける業務での労働者の暴露防止に関する技術上の指針」に基づいて実施する必要があります。

 下記の①~⑤の事について、注意が必要になります。

  •  石綿飛散防止漏洩防止対策徹底マニュアル[2.20版](平成30年3月:厚生労働省)
  • 「建築物に係る石綿の事前調査における主な留意点について」(平成30年4月20日)

(1)事前調査の実施者について

 石綿の有無について、書面調査・現地調査(目視、設計図書による調査)を的確にできる者が行う。

  • 特定建築物石綿含有建材調査者
  • 石綿作業主任者技能講習終了者の石綿等の除去等の作業の経験を有する者
  • 日本アスベスト診断協会に登録された者

(2)事前調査の実施方法について~書面調査・現地調査・試料採取~

 ②-1現地調査を必ず実施

  • 設計図書等がある場合には必ず確認し、設計図書等のみで判断せずに現地調査を行うこと。

  ※設計図書等の整合性を現地調査と照らし合わせて確認すること。

  •  内装や下地等の内側等、外観からでは直接確認できない部分についても網羅的に行うこと。

  ※破壊調査などを行って、天井や壁、層間塞ぎなどの隠蔽部の確認を行う。

 ②-2石綿有無の判断

  • 石綿が含有する可能性のある建材を、石綿を含有しないと判断するには分析が必要になる。
  •  同一と考えられる建材の範囲の特定には、建築物等の改修・増改築がされている場合等が疑われる時には、見た目や先入観で安易な判断はせずにそれぞれの範囲ごとに別の建材して、石綿の含有の有無を判断すること。
  •  同一と考えられる建材の範囲ごとに、原則として3ヶ所以上から試料を採取すること。

(3)分析~石綿の有無の分析調査が的確にできる者~

  アスベスト分析については、アスベストの有無の分析が的確に出来る者として、下記の分析者が該当します。

  • 公益社団法人日本作業環境測定協会:「石綿分析技術評価事業」Aランク又はBランクの認定技術者
  • 一般社団法人日本環境測定分析協会アスベスト偏光顕微鏡実技研修修了者」・「アスベスト偏光顕微鏡インストラクター」

(4)事前調査における責任分担の明確化及び情報伝達

 事前調査の一連の過程(書類調査➡現地調査➡試料採取➡分析➡報告書)において、しっかり情報伝達を行ない、その際の責任者・指示者を明確にしなければなりません。

 主な内容は下記の通りです。

①事前調査の一連の過程に携わる者の間での、判断と責任分担の明確化

  • 同一と考えられる建材範囲の特定(代表性の適切な判断)
  • 同一建材範囲のうち試料採取する箇所の選定(変動性・均一性の適切な考慮)

②一部解体や改修工事の作業においては、施工責任者から調査責任者に対して作業範囲の適切に伝わるように必要な指示・依頼を行うこと。

③分析者に対して、採取した試料の建材の種類など重要な情報を伝達すること。

(5)調査の記録について

解体前アスベスト事前調査の記録については、下記の事項を記録として残されければなりません。

  • 石綿を含有していないと判断した建材は、その判断根拠を示す。
  • 作業者へ石綿含有建材の使用箇所を的確に伝える。
  • 調査の責任分担を明確に記録する。
  • 事前調査で確認が困難であった箇所については記録する。

7.当社のアスベスト事前調査の実施体制

 特定建築物石綿含有建材調査者による事前調査、「石綿分析技術者評価事業」Aランクの認定技術者による分析を実施しています。

上記の技術上の指針に記されている注意事項に対応した、資料調査から現地調査(破壊調査を含む)、施工範囲図を含む調査レポート、分析作業とその提案、試料採取まで一貫して調査を実施しています。

 また採取作業の安全性確保をするために石綿作業主任者も同時に配置しています。

(1)特定建築物石綿含有建材調査者・アスベスト分析aランク技術者が在籍

 国土交通省による公的な資格である、特定建築物石綿含有建材調査者が事前調査を実施しています。

 JIS A 1481-1によるアスベスト分析は非常に技術者の経験と技術力が問われる分析法となっています。

 当社では公益社団法人日本作業環境測定協会が実施している「石綿分析技術評価事業」に参加しAランクの認定技術者によるアスベスト分析を実施しています。

(2)調査対応可能エリアは山梨県はじめ隣接県(長野県・群馬県・埼玉県・神奈川県・東京都など)

 当社の調査対応可能エリアは、山梨はじめ隣接県の長野県・群馬県・埼玉県・神奈川県・東京都まで調査にお伺いいたします。

 当社では専門の資格者が調査、試料採取、アスベスト分析、調査報告書まで一貫して対応致します。


8.アスベスト事前調査の報告書類について

 事前調査の報告書は発注者及び建築物の所有者ともに、40年の保管が望ましいとされています。事前調査報告書の必要事項は厚生労働省より「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」や「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」が示されています。

 当社では以下の事項を含めた報告書を作成しています。アスベスト事前調査は添付資料や確認写真など非常に作成書類が多くなります。

(1)技術上の指針

  • 事業場の名称
  • 建築物等の種類
  • 発注者からの石綿等使用の通知の有無
  • 調査方法及び調査箇所
  • 調査結果(分析による調査を行った場合はその結果を含む)
  • 調査者氏名及び所属
  • 調査を終了した年月日
  • その他必要な書類

(2)石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル

  1. 報告年月日
  2. 報告書No.
  3. 報告先の名称
  4. 報告書名
  5. 報告者
  6. 調査責任者、調査実施者(現地調査、試料採取箇所の判断をしたもの)
  7. 調査の目的(石綿則第3条に基づく事前調査など)
  8. 目的とする調査範囲及び調査対象建材
  9. 対象物件の概要(施設名・竣工年・所在地・構造・規模・用途など)
  10. 調査期間
  11. 調査方法(設計図書調査・現地調査・分析など)
  12. 結果の概要
  13. 調査結果平面図(石綿含有建材位置図、サンプリング位置図)
  14. 調査報告書詳細
  15. 調査した範囲(アクセス不能であった箇所、改修の場合は調査対象外の箇所)
  16. 各部屋の調査現況写真
  17. サンプリング等の調査状況写真
  18. 添付資料(判断根拠等証明書:メーカーの証明書、分析結果報告書など)
  19. その他(工法・ばく露防止対策の参考になる現場状況等)

(3)当社の報告書例(平面図・一覧表・建材確認写真)

当社の事前調査時に作成している報告書の一例になります。

  • 図面と写真画像をセットにしたものや、確認位置図も添付をしています。
  • 建材使用状況一覧表の判定については、分析調査が分離発注だったため空欄になっています。
  • 事前調査結果を元にアスベスト分析が必要となる計画を立て、その後分析を実施しています。

(4)解体等工事の事前調査・調査結果説明・掲示の義務付け

 建築物の解体等工事の受注者及び自主施工者は、アスベストの使用の有無について事前に調査し、その結果を解体等工事の場所に掲示しなければなりません。

 解体工事の受注者は、発注者に対して事前調査の結果を書面で説明しなければなりません。

 ※届出が必要な場合には、届出事項の説明も必要になります。

※上記画像はアスベスト事前調査結果の例になります。様式は日本建設業連合会のHPにありますのでそちらを利用して下さい。



9.アスベスト事前調査依頼の問い合わせフォーム

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アスベスト建物調査依頼書
建物のアスベスト調査のご依頼の際には、こちらの依頼書をご利用下さい。
アスベスト建物調査依頼書.xlsx
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