災害対応とアスベスト

 我が国では地震・水害・台風・噴火など多くの自然災害が発生している。アスベストは建築物の解体時や建築物内で作業をする際にばく露するが、大規模災害においてもばく露する可能性がある。阪神淡路大震災や東日本大震災を通じて、規制の強化やアスベスト調査の技術が発達してきた。

 これまでは災害が発生してからアスベスト対策がされてきたが、これからは事前にアスベストへのばく露を防ぐため、平常時の対応や災害発生時にアスベストばく露を防ぐことが重要となってきている。

震災とアスベスト被害について

阪神淡路大震災を原因とするアスベスト労災認定

 阪神・淡路大震災時に兵庫県の警察官として被害者救護などに従事していた男性が、2002年の退職後した後に中皮腫を発症し、2014年に亡くなった。被災地でアスベストを吸い込んだとして公務災害として認定された。(認定日は平成30年3月19日付)

 男性は震災発生直後に、約1ヶ月間の間、被災者の救護や警戒などにあたっており、活動時にガレキなどに付着し舞い上がったアスベストが混ざった粉じんを吸い込んだの原因として、2014年4月に地方公務災害補償基金県支部に公務災害申請を申請した。男性は同年に亡くなったが、申請は遺族が引き継ぎ、2018年3月に公務との関連が認められた。

 中皮腫患者らを支援する「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」によると、警察官が石綿関連疾患で公務災害と認定され事例が明らかになるのは初めてと見られる。

東日本大震災で明らかになったレベル3建材の飛散問題

 東日本大震災の被災地の石巻市の港湾地区では、アスベストが含有した波板スレートを使った建物が非常に多く見られた。レベル1建材の吹付け材はさほど多くはなく、スレート板(レベル3建材)が大量に放置されていた状況が長く続いた。

 被災した建物の解体工事の管理ががずさんであり、大量の解体工事を行う必要があり、解体後には大量の主にレベル3のアスベスト含有建材が放置されていた。

 スレートなどのアスベスト含有のレベル3建材の建物の解体は、湿潤化し手バラしで解体することが決まっているが、実際には守られていないことが多かった。また、解体時に手バラしで解体を行っても、自治体の集積場に持ち込む際には袋詰めをして持っていくように言われ、わざわざ破砕して袋詰めしていた。

 レベル3建材について把握している自治体は半分ほどで、把握していない自治体が4割ほどありました。また、自治体が発注した解体工事の中でも7,8割くらいがレベル3建材のアスベスト対応が出来ていなかった。

 厚生労働省の調査では被災地のレベル1、レベル2の解体現場で80件うち13件でアスベストが漏洩していたの確認した。

 東日本大震災後に被災地においては、アスベスト含有のレベル1,2建材の解体時のアスベスト漏洩問題などがあったが、それよりもレベル3のアスベスト建材への知識・認識不足が露呈した。


災害時のアスベスト対策:総務省の勧告

 今後、大規模な自然災害の発生の恐れがあり、災害時におけるアスベストの飛散・ばく露防止について的確な準備・措置を講じることが極めて重要なことから、総務省ではアスベストによる健康被害防止の観点から実施状況を調査し、必要な改善措置について勧告をおこなった。

 総務省の調査では、平常時からのアスベスト使用建築物の所在情報の収集等、災害時に備えた準備を行っている県市は一部である。災害時に備えた準備について、その必要性を含め、具体的内容の周知徹底、対策の強化を環境省に勧告した。

災害時における石綿飛散防止に係る取扱マニュアル改定:環境省

 災害時のおいては、石綿含有建材を使用した建築物が倒壊・破損して外部に露出し、アスベストが飛散し、住民や災害対応の従事者がばく露するおそれがあります。災害発生時には多数の被災建築物の解体・補修、大量の廃棄物の処理が行われことから、平常時以上にアスベストの飛散やばく露の可能性が高まる。

 環境省の「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」は阪神淡路大震災を教訓を元に作成された。平成26年6月の大気汚染防止法改正による届出義務者の変更や事前調査の義務付け、関係法令や技術指針の改正、東日本大震災の大規模な津波への対応、総務省の勧告といった事を考慮し、今後想定され災害時に活用されるように改定が行われた。

自治体の災害廃棄物処理計画

 災害時には、様々な種類の廃棄物が一度に大量発生します。災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理は、生活環境の保全・公衆衛生の悪化の防止に非常に重要となります。また、災害廃棄物の早期処理は被災地域の早期復興にも繋がります。

 近年においては、豪雨災害、地震が発生しており、大きな災害時には直接的な被害ばかりだけではなく、大量に発生する災害廃棄物が、復旧・復興の妨げになることもあります。

 環境省は、発災前の災害廃棄物処理計画の策定を都道府県、市町村に促している。


災害時における被災建築物のアスベスト調査に関する協定

 一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会(以下、ASA協会)は、災害時における被災建物のアスベスト調査に関する協定を、「東京都世田谷区」、「福岡市」「豊田市」、「長野県」と災害時協定を締結しています。

また、ASA協会では、環境省関東地方環境事務所、国立研究開発法人国立環境研究所、埼玉県環境科学国際センターとの4団体で「災害時のアスベスト対策支援に関する合意書」が結び、災害発生時に被災自治体が実施するアスベスト対策について、発生直後の支援を行うことを締結しています。

 平成30年7月の豪雨災害では、7月24日、25日の2日間で環境省からの要請により国立環境研究所と合同により倉敷市真備町の被災建築物のアスベスト目視調査を実施しています。

 平成30年9年の北海道胆振東部地震では、北海道庁環境対策課からの依頼を受け、避難所の石綿含有吹付材使用状況を確認を実施しました。

 

 一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会のホームページはこちらhttps://asa-japan.or.jp/index.php