アスベストで一番問題視されている建材は、吹付け材と呼ばれるレベル1の飛散性のものになります。建築物を調査する中でレベル1やレベル2の建材以外でも、接触や破損によって飛散する可能性がある建材も報告しています。
写真の白い紐状のものは、アスベスト繊維で編編まれた石綿布と呼ばれる建材です。ほぼクリソタイルで構成され、通常は高温のボイラなどに使用されているケースがほとんどです。当社が調査した事例で一般住宅や、保育園や幼稚園などの暖房設備や室内の煙突に使用されていることがあります。
もともとは非飛散性の建材で区分はレベル3となり、触れたりしなければ飛散やばく露による影響はまずありません。ではこの写真の何が問題かというと、使用されている部位が園児の目の前にあるということです。今回確認した時点では、引っ張られたと思われるようなほつれや、周囲に石綿布が若干落ちている状況でした。
行政などに相談しても非飛散性だから問題無いと回答をもらいことがほとんどですが、平成28年に総務省よりアスベスト行政の勧告が出され、その中で非飛散性のレベル3建材であっても東日本大震災後の解体工事で、アスベストが飛散している事例が報告され、レベル3建材の飛散性を再検証するような内容になっています。
当社の通常のアスベスト調査ではレベル1、レベル2の建材を対象としていますが、このようなレベル3建材で飛散性がありそうな建材も確認しています。アスベスト調査はまだ調査員によるレベル差が非常に大きいため、このような事例を見逃しているケースもよくあります。
調査が本当にできている施設は
- 分析結果報告書だけでなく建物内の確認写真やアスベストでないことを確認できる資料調査やアスベストの平面図が添付
- 調査者名と保有資格が明記されている報告書
以上の2点が確認できるようになっているはずです。
今まで数多くのアスベスト調査を実施してきましたが、アスベスト分析だけを実施して調査ができない機関が数多くあります。厚生労働省や総務省、文部科学省、農林水産省から調査通知がよく出されていますが、元々石綿障害予防規則では建物内でアスベストばく露がある場合には対策を、程度によっては保護具の使用を義務付けています。
過去にはアスベストの裁判の中で建物管理者による責任が認められたケースもあり、今後は訴訟リスクや従業員の健康リスクを把握するためにアスベストの正確な種類と位置の把握と記録が必要になります。
ちなみに私の息子が通っている幼稚園にも写真のような石綿布があり、すぐに除去してもらいました。過去にはアスベストの確認を施工会社や建築士が確認したようですが、口頭だけでアスベストは一切ないと報告されいたようですが、レベル2建材と思われるものも施工は確認できています。
アスベスト調査は専門知識と実務経験がないと、確認することは困難です。書類も40年保管が望ましく、調査時点の最新の知識をもって実施する必要があります。