不動産取引とアスベスト

 不動産の賃貸契約や建物の不動産売買において、アスベスト使用の有無が告知事項となっています。建物や土地の売買契約時においては不動産価格の決定や売買契約後のトラブル防止のため、アスベスト確認調査や土壌汚染調査が実施されるようになってきています。


アスベスト調査の必要性

アスベストは建築物にとって負の資産となります。宅地建築物取引業法にもアスベストについて記載されていますが、取引価格や資産の評価において、法律上の取り扱いとは異なる場合があります。

重要事項説明書にアスベスト調査の記録の有無が必要

 不動産取引において、物件内容や取引条件などについて、契約をするかどうかを決めるための必要な情報が記載された書面が「重要事項説明書」となります。

 不動産取引において、建築物のアスベストの使用の有無の調査の結果が記録されているときは、宅地建物取引業法35条1項14号により、その内容について説明しなければならないことになっています。アスベスト調査をしていない場合については説明はされないので注意して下さい。

アスベストと不動産取引価格への影響

 アスベストについては、現在は原則使用・製造が禁止されていますが、過去に使用されたアスベストが現在も残っている場合が多くあります。アスベストの種類や施工状況や破損・劣化状況によっては、すぐに除去等を行う必要があるケースもあります。不動産取引価格の決定について、将来に解体する際のアスベスト除去費用を考慮する必要があります。

 そのため、アスベストの存在の有無は、物件購入や売却の際には取引前に確認しておく必要があります。

 

不動産の取引時には、大きな影響を及ぼしますので、建築物の所有者はできるだけ早くアスベスト調査を実施することをお勧めします。


注意すべき建築物の構造と土中アスベストへの対応

 不動産取引で注目されるのは建築物となります。アスベストが使用される可能性が高い建築物は構造や建築地域である程度判断することができます。土地についても、最近では土壌中に埋設されていたアスベストに対して瑕疵が認められ、損害賠償が発生した事例があります。

アスベストの使用頻度が高い建築物

 不動産取引で特に注意する必要のある建築物の構造が鉄骨造(S造)になります。鉄骨造の場合には、鉄骨部の柱や梁等への耐火被覆が必要になり、アスベスト含有の吹付け材がコスト面で安価であったため、1970年代の高度経済成長期は広く使用された経緯があります。また、鉄骨造には火災が建物の隙間から上層階への延焼を防ぐための層間塞ぎがあります。層間塞ぎは図面や現地をよく確認しないと確認することが困難です。

 

 他のコンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造等でもアスベストが使用されている可能性はあります。建物の使用目的に応じて防音や防湿、絶縁を目的としてアスベストが施工されたケースがあります。

建築物の一例

  • 鉄骨造りもしくはコンクリート、鉄筋鉄骨コンクリート
  • 耐火建築物
  • 機械室、空調機械室、ボイラー室、電気室、煙突のある建築物

土壌中のアスベスト

 最近の事例ですが不動産取引において土壌中にアスベスト含有のスレート片が混入していため、裁判になったケースがあります。「平成30年6月28日事件番号:平成28(ネ)3038」土地の売買が完了した後に土壌中にスレート片が発見され、物流ターミナルの建設の遅れやアスベスト除去作業の費用に対して支払えとなっています。

 スレート片はその他成形板やレベル3とされるアスベスト含有建材です。通常は吹付材や保温材と違い解体や改修作業で届出の必要はなく、湿潤化とてばらしで除去することが可能なため大きく問題となることは少ないですが、廃棄物としては石綿含有廃棄物として処分する必要があります。

 今回のように土壌中のスレート片は湿潤化、分別が非常に困難です。当社で以前ヒアリングした内容だと、土壌をふるいにかけて分別しているようですが、レベル3建材といえども湿潤化して飛散防止するには非常に難しくコストがかかると聞いています。

 今回の裁判の例は特殊に思えますが、スレート片が地中に埋設されているケースは当社でもよく見かけます。不動産取引前によく確認する必要があり、瑕疵担保責任を行使するにも期限があるため確認が必要になります。

外壁や内壁のアスベスト含有の有無

 建築物に外壁や内壁に使用されている塗材にアスベストが含まれていると、除去に多額の費用がかかる場合があります。塗材は

  • リシン吹付け
  • スタッコ吹付け
  • 弾性塗料吹付け
  • じゅらく
  • 京壁

など一般の住宅から工場など幅広く使用されています。吹付け部分にアスベストが含まれていると解体や改修の際に高額な費用がかかる場合があります。

仕上げ塗材のアスベスト分析についてはこちらを参考にして下さい。


アスベストの有無を調査する方法とは?

 アスベストの調査には、設計図書の確認と現地調査が必要になります。

 設計図書は、建物を建築した建築業者やその建物を販売した不動産業者に問い合わせることで、確認することができます。

 ただし、設計図書にアスベストを使用した旨の記載がない場合や、その後の改修工事等を行った場合には、設計図書からアスベストの使用の有無を確認することができないケースもあり、実際に見て確認する現地調査が必要になります。

 

 アスベストが使用されているのかどうかを個人で判断するのは難しいので、専門家に依頼することをお勧めします。

アスベスト調査の詳細についてはこちら


アスベスト調査の具体的手順とは?

①相談・依頼

 アスベストの使用の有無を調査したいと思ったら、専門的な講習を受けた、公的な資格を持った専門家に相談・依頼

 

②調査

 ・調査は専門の資格者によって実施

 ・専門家は図面に基づいた書類調査を行う。

 ※事前に建築業者に問い合わせて設計図書等を入手

 ・書類調査後に現地調査の実施

  必要に応じて建材のサンプリング及びアスベスト分析の提案

 

③調査後

 調査後は、調査報告書を作成し、依頼者に報告書の提出する。その際に、調査結果及び今後に行うべき管理等の説明をします。

 調査報告書は将来的な改修・解体工事を行うときに必要となるので、大切に保管する。

 当社では、上記のアスベスト調査の流れに対応した、公的な資格を持った専門家が調査を対応致します。


アスベストQ&A

アスベストが使用されていた場合にはどうしたらよいか?

◎吹付けアスベスト:レベル1

 吹付けアスベストについては、改修・解体工事による除去の際には、届出や対策が必要になります。

 使用されている吹付けアスベストの損傷や劣化がある場合には、空気中にアスベスト繊維が飛散し、吸引するおそれがあります。現状把握し、損傷や劣化が激しい場合には、除去等の対策が必要になります。

 

◎保温材、断熱材、耐火被覆:レベル2

吹付けアスベストと同様の把握、処置・対策が必要になります。

 

◎成形板等:レベル3

 成形板等にアスベストが使用されていた場合には、すぐに処置や対策を行う必要があるわけではありません。

 通常の破損や損傷がない成形板等の場合には、成形板等からアスベストが繊維が空気中に飛散することはありません。

 建築物の改修・解体工事時に、アスベスト使用されていた成形板等を破砕する作業を行う場合には、軽微な作業であってもアスベスト繊維が空気中に飛散する危険性があります。除去の際に、届出義務はありませんが、飛散防止対策は必要になります。

 


アスベスト対策方法は?

 アスベスト含有吹付け材への対処方法としては、除去、封じ込め、囲い込みの3つがあります。どれを選択するかは、個々のケースごとに専門業者との相談が必要となります。

 

①除去

アスベスト含有吹付け材を完全に取り除く方法

➡アスベストによる健康被害への懸念はなくなります。

 

②封じ込め

アスベスト含有吹付け材の表層に、化学物質を散布して被覆・固定化

➡アスベストが劣化しても繊維が空気中に漂わないようにする方法です。将来改修などを行う際には、改めて除去工事が必要です。

 

③囲い込み

アスベスト含有吹付け材の表層を板状の材料で覆う方法

➡工事の際にはアスベスト含有吹付け材に触れてはいけないこと、間接的な衝撃も与えてはいけないことなど、注意が必要です。